2011年11月16日水曜日

Fate/stay nightでわか(ったような気がす)るProcessing(Java)のオブジェクト指向:1

それなりに需要があるかもしれないので、まとめてみました。


前提

  1. Casey Reas, Ben Fry著、船田巧訳、『Processingをはじめよう』、オライリージャパン、2011年の「9章オブジェクト」以前の内容は理解している。
  2. Fate/stay nightを知っていて、ネタバレがあっても構わない

1.オブジェクト指向プログラミング

オブジェクト指向のプログラムは、「コンピュータの中にオブジェクトというものがあって、これがお互いにメッセージを送り合うことで動いている」といった感じで作ります。

なお、メッセージを送ることを、メッセージ・パッシング(message passing: メッセージ送信)といいます。

オブジェクトというのは、Fate/stay night(以下Fate)を例にすると、サーヴァント(使い魔)のようなものです。オブジェクトにメッセージを送ることは、サーヴァントに指示を出して使役することに対応します。

Fateと違うのは、いくらでもサーヴァントと契約できることです。いろいろなサーヴァントを召喚して、使役して、プログラムを組み立てます。


2.クラス

Processingは、実際にはJavaだったりします。Javaはクラス・ベースのオブジェクト指向言語で、オブジェクトを使うために、クラスを用意する必要があります。
クラスは、オブジェクトの設計図のようなものです。

このクラスは、Fateのクラスのようなものだと思ってください。実際にはあんまりちゃんと対応しないけど、取りあえず。

クラスには、そのクラスのサーヴァントが持つべきパラメータと、そのクラスのサーヴァントを使役するのに使う指示を用意します。
このパラメータのことをフィールド(field データを記入する欄)、指示をメソッド(method 処理方法)と言います。

たとえば、セイバー(剣の騎士)のクラスのサーヴァントには、真名と魔力というフィールドを持たせ、攻撃しろというメソッドを用意するとします。他にもいろいろあると思いますが、簡単のためにこの3つにしておきます。

これをクラス図というもので書くと以下のようになります。

セイバー
真名
魔力
攻撃しろ()

プログラム的には、フィールドは変数の宣言、メソッドは関数の定義みたいに書きます。
というわけで、具体的には、以下のようになります。

/* セイバーのクラスの定義 */
class Saber {
    /* フィールドの宣言 */
    String trueName; // 真名
    int magicalEnergy; // 魔力

    /* メソッドの定義 */
    void attack() {
        println("剣で攻撃しました。");
    }
}

3.オブジェクトの生成と使用

ここまでは、まだ、クラス(設計図)を用意しただけで、実際にオブジェクトを使うところまで行っていません。

これは、セイバーというクラスはあるけれど、具体的にサーヴァントが召喚されていないし、使役もされていないということです。

それでは、召喚して使役する方法を説明します。まず、とりあえず、仮の名前を用意します。
普通の変数の宣言と同じように、型(ここではクラス名)と変数名(仮の名前)を以下のように書きます。

Saber ahoge;

次に、プログラムの中でサーヴァントを召喚し、契約します。

ahoge = new Saber();

ここで、new クラス名()で、召喚を行ないます。
仮の名前に=で代入することで、名前で縛ることで、契約がなされます。

これは、プログラム的には、クラスの定義から、オブジェクトを生成したことになります。
このオブジェクトは、設計図であるクラスではなく、具体的な実体があるので、インスタンス(instance 具体的な実体)とも呼ばれます。

Fateの現界している個々のサーヴァントがインスタンスということです。ちなみに、new(召喚)しても、=(契約)しないと、現界できなくなって、消滅し(ガーベッジ・コレクションされ)てしまいます。

召喚して契約したら、使役できます。具体的には、以下のように、「仮の名前.メソッド名()」で、サーヴァントに指示を出して使役します。

ahoge.attack();

4.オブジェクトの初期化

変数を初期化するときには、「int i = 0;」のように、宣言と同時に代入していました。
しかし、一般にオブジェクトは、複数のパラメータを持っているので、同じように初期化することはできません。

では、たとえば、Saberの場合、召喚時に真名と魔力を初期化したいとします。
次のように書くことで、真名を「アルトリア・ペンドラゴン」、魔力を「40」と、初期化するという文法にするのはどうでしょうか?

ahoge = new Saber("アルトリア・ペンドラゴン", 40);

で、実際、Javaの場合、そういう文法になっています。

これはよく見ると、Saberという関数があって、その引数が真名と魔力になっているようなものです。
また、この関数は、Saberクラスのサーヴァント(オブジェクト)を返すので、戻り値の型はSaberです。

というわけで、この関数の宣言を以下のように書いてはどうでしょう。

/* セイバーのクラスの定義 */
class Saber {
    /* フィールドの宣言 */
    String trueName; // 真名
    int magicalEnergy; // 魔力

    /* コンストラクタの定義 */
    Saber(String name, int energy) {
        trueName = name;
        println("真名を" + name + "にしました。");
        magicalEnergy = energy;
        println("魔力を" + energy + "にしました。");
    }

    /* メソッドの定義 */
    void attack() {
        println("剣で攻撃しました。");
    }
}

戻り値の型はSaberなので、わざわざ書くと、2回Saberと書くことになるので、書かないという文法にしておきます。

このように、オブジェクトを初期化するのに使う関数のようなものを、オブジェクト指向言語ではコンストラクタ(constructor 生成するのに使用されるもの)と呼びます。

文法的には、クラス名と同じ名前の関数の定義です。ただし、戻り値の型は書きません。


5.まとめ

  • オブジェクト指向のプログラムでは、サーヴァント(オブジェクト)を召喚して、使役することで、処理を実行する
  • クラスは、Fateのクラスみたいなもの
  • クラスの定義には、そのクラスのサーヴァントが持っているパラメータを変数の宣言みたいに、使役するのに使う指示を関数の定義みたいに書く
  • サーヴァントは、召喚して(new クラス名())、契約して(仮の名前に=で代入)、使役できるようになる
  • 使役するには、「仮の名前.メソッド名()」
  • サーヴァントを召喚と同時に初期化するのに、コンストラクタというものを使う
  • コンストラクタの定義は、クラス名と同じ名前の関数。ただし、戻り値の型を書かない

では、最後にProcessingのプログラムの全体を書いておきます。

Saber ahoge; // 仮の名前を用意

void setup() {
    /* セイバーのサーヴァントを召喚して、契約します */
    ahoge = new Saber("アルトリア・ペンドラゴン", 40);

    /* セイバーを使役します(攻撃するように命じます) */
    ahoge.attack();
}

/* セイバーのクラスの定義 */
class Saber {
    /* フィールドの宣言 */
    String trueName; // 真名
    int magicalEnergy; // 魔力

    /* コンストラクタの定義 */
    Saber(String name, int energy) {
        trueName = name;
        println("真名を" + name + "にしました。");
        magicalEnergy = energy;
        println("魔力を" + energy + "にしました。");
    }

    /* メソッドの定義 */
    void attack() {
        println("剣で攻撃しました。");
    }
}

Todo?

カプセル化とアクセス制御、継承、多態性、抽象クラスとインターフェイス。
同じクラスのサーヴァントでも、インスタンスによって、いろいろな宝具とか、攻撃が使えるようにする設計。

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