今年一番ヒットだったツールは、RICOHの全天球カメラTHETA(シータ)です。
いわゆるパノラマ写真を撮影できるカメラです。
このカメラのすごいところは、シャッターを1回切るだけで全周囲撮影できるところ。これがなんとおよそ4万円。
欠点は、画素数が3584x1792と少ないことと、暗所でのノイズが多いこと。しかし、それを補って余りあるお手軽さ。
シャッターを切って急いでぐるりんと回って撮影する必要もなければ、パシャパシャと分割して撮影したものをパノラマ合成ソフト(スティッチングソフト)でつなぐ必要もありません。
その秘密は、2つの超広角の魚眼レンズ。これが前後に2つついていて、本当に1シャッターで全周撮影できます。そして、カメラの中で、正距円筒図法(Equirectangular)の画像に合成してくれます。
今まで、このような写真を撮影しようとすると、ある程度広角なレンズ、カメラをのせて回転させる雲台といった機材を使って、ちょっとずつ角度を変えて分割撮影し、それをHuginなどのパノラマ合成ソフトで合成していました。また、表示するにはパノラマ画像表示ソフトが必要で、よく知られた実例はQuickTime VRです。
たとえば、以下のような本にその方法が解説されています。
- Scott Highton, “Virtual Reality Photography”, 2010年
- 久門易『この一冊ですべてわかる! 360度VRパノラマ制作 パーフェクトガイド』、秀和システム、2011年
あるいは、Googleストリートビューのように、全天球が1シャッターで撮影できるように、カメラを何台も組み合わせたシステムが必要でした。
RICOHの全天球カメラTHETAは、これらをシャッターを1回切るだけでできるようにしてくれました。
最初に書いたように、画素数は3584x1792。もしも普通のカメラで横1周ぐるりんと8分割して撮影したとすると、1ショットあたりの横幅は3584/8=448画素に相当します。かなり粗い画像だと言えるでしょう。
また、暗いところで撮影すると、ノイズが目立ちます。
しかし、なんと言ってもお手軽です。
撮影するには直接シャッターボタンを押してもいいし、iPhoneやAndroid用の専用アプリなどからリモート撮影も可能です。
THETAは無線LANの親機になることができます。iPhoneやAndroidから、THETAに無線でつなぎ、専用アプリを起動すると、リモートで撮影したり、カメラ内の画像を取り込むことができ、全天球画像を楽しめます。また、PCにUSB接続すれば、普通のカメラに見え、正距円筒図法の画像を取り出すことができます(Macの場合、iPhotoなどを経由)。
また、Webで公開するための手段も用意されています。
必要なのは、Facebookアカウントと専用アプリ。専用アプリに画像を取り込んで、Facebookアカウントでtheta360.comにログインします。すると、画像を投稿して共有することができます。
この画像はPCやスマホなどから、そのまま閲覧することができます。
また、FacebookやTwitter、Tumblrに投稿することもできます。
現状、theta360.comのサイトでは、サーバーサイドにはRuby on Railsを使っているっぽく見えます。そして、RICOH THETAで撮影された正距円筒図法画像をAmazon S3に保存しているようです(似たようなシステムの構築方法は、栗田由菜、『RailsとiPhoneではじめるアプリケーション開発』、インプレスジャパン、2013年あたりに)
その画像をPCなどからはFlashを使って見ることができるようになっています。
また、スマホなどから見る場合には、画像を立方体に投影し、CSS Transforms Module Level 1を用いて、表示しているようです。
あまりにおもしろいので、WebGLを使って正距円筒図法のパノラマ画像を表示するアプリTheta Viewerを作ってみました。jQueryのプラグインなので、Web屋さんには簡単に使えると思います。
ちなみに今日までのAomori Web Adevent Calendar 2013は、以下のみなさんでした。
- 古川勝也さん、今年一番ヒットだったツールは「TaskPaper」
- 佐々木康幸さん、[AWAC]今年一番HITしたツールは「Google Docs」
- 齋藤亨さん、今年一番ヒットだったツールは「竹尾紙見本帖」
- 髙森三樹さん、今年一番のツールは「プレゼンツールとしてのiPadとiPhone」
- 花田純一さん、今年一番ヒットだったツールは「Misfit Shine」
- 那須悟さん、AWAC 今年のベストツールは「Surface 2」〜ビジネスでも使えるぞ!
- 工藤大輔さん、ぼぶです。
明日は、すどうまさゆきさん!
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